「転職活動」と「転職」の手順
「転職活動」と「転職」の手順
今回は、SIer・SEの転職活動の進め方とスケジュールについて書いていきます。
これまで、転職にあたってのベースとなる考え方に関する記事や、
具体的な転職先について記事を書かせていただきました。
今回はそれらを踏まえて、より実践的な内容として、時間軸に基づいた転職活動の進め方とそのポイントをまとめていきたいと思います。
「転職活動」と「転職」を分けて考える
まず転職や転職活動を考えるにあたって、私は、「転職活動」と「転職」を分けて考えることをおすすめしています。
転職とは、職を変える意思決定と考えています。
それに対して、転職活動とは、意思決定の判断材料集めと捉えています。
例えば、リクナビやマイナビ、ビズリーチなどに登録すること、私のようなエージェントに相談をすること、「SIer 転職」とGoogle検索をすること、更には、実際に企業に応募し選考を受けることなどは、すべて意思決定の判断材料を集める行動です。
その上で、転職は慎重に行うべきだが、転職活動は積極的に行うべき、と私は考えています。
転職は、この先の数年、数十年を決める重要な意思決定であるとともに、不可逆的な要素を含むため、簡単に決めて良いものではもちろんありません。
しかし、切符(内定)を手にしていない状態では意思決定を行うことはできません。
そのため、切符を手にするために転職活動をやり抜くことがとても大切だと考えています。
また、転職活動は自分のキャリアを見つめ直す大きなチャンスでもあります。
転職活動をする中で、現職では自身の指す姿には近づけないと気がついたのならば、自分のキャリアの軌道修正、つまり転職をより真剣に検討していくことになります。
その一方で、現職でも近づけると結論が出た場合には、より現職に留まる覚悟が決まり、目の前の仕事により本気で向き合えるのでパフォーマンスが上がります。
このように、転職活動を通してキャリアを真剣に考えることは、いずれにしろとても有意義な時間になることと思います。
あえて転職活動を行うデメリットを挙げるとすれば、準備に時間と体力を割く必要があるということぐらいで、それ以外は特にありません。
私は、転職を支援するという立場ではありますが、結論がどうであろうと、その方にとってなりたい姿に近づく意思決定を応援したいと思っています。
転職活動の目的は、転職をすることではなく、自分のキャリアを真剣に考えること。
これが私の持論であり、支援させていただく方にお伝えしていることです。
「転職活動」の進め方
転職準備
なりたい姿を描く
転職活動でまず最初にやることは、なりたい姿を描くことです。
またそれと同時に、どうすればその姿に近づけるかも同時に考えていきます。
詳しくは、冒頭に紹介した以下の記事をお読みください。
企業選定と志望動機の整理
次に、なりたい姿をもとに企業選定、それから志望動機の整理を行います。
業界ごとの特徴と企業ごとの特徴を正確に捉えながら、深く整理を行う必要があるので、できれば、業界や企業に知見を持った方とディスカッションベースで進められると良いと思います。
基本的な考え方や具体的な企業例は以下の記事をお読みください。
WEBテスト・ケース対策準備
コンサルティングファームを志望するのであれば、アプライ(応募)前の時期からWEBテストとケース対策の準備を進めることをおすすめします。
WEBテストはファームごとにテストが異なりますので、注意が必要です。また、ケース対策として、書籍を数冊読んで、フェルミ推定やケースの考え方をイメージできるようにしておきます。こちらも以下の記事でまとめましたのでご覧ください。
書類(履歴書と職務経歴書)作成
提出する書類は、ほとんどの場合は履歴書と職務経歴書の2つです。
履歴書については、出身高校から現職までを書きます。出身高校が抜けてしまっている方も散見されますので、忘れずに書いてください。
また、基本的なことですが、写真について縦横比が歪んでいないか、自撮りのようになっていないか(背景がくすんでいる、肩が不自然に上がっている、影がついてしまっている)は意外と甘くなりがちですので、注意が必要です。念のためですがビジネスマナーとしてジャケット、シャツ、ネクタイを着用の上での写真が基本としている企業が多いのでこちらも注意してください。
職務経歴書については、応募する企業においてどのようなスキルが活きるかを意識して書きます。
主語述語、誤字脱字、文章構成(論理構成)に注意しながら作成してください。
アプライ(応募)
スケジューリング
いよいよアプライです。
このとき、やみくもにアプライするのではなく、どの企業にいつアプライし、1次選考、2次選考をどのようなタイミングで受けていくかを予め決めておく必要があります。これがスケジューリングです。
一般的に、内定が出てからの内定承諾期間は一週間程度です。
例えば、スケジューリングを怠ると、第一志望の企業の選考がまだ2週間くらいかかるタイミングで、第二志望の企業から内定が出るという事態が起きる可能性があります。
その場合、第一志望をあきらめて第二志望の企業の内定を承諾するか、第一志望に賭けて、第二志望の内定をお断りするかという、大変難しい決断を迫られることになります。
そのため、スケジューリングは内定が出るタイミングを揃える、というのが鉄則です。
これには、どうしても細かい交渉などが必要ですので、交渉ごとに慣れているエージェントと相談しながら進めていくとスムーズにいきます。
以下の記事も参考にしてみてください。
応募作業
書類とスケジューリングができたら、実際に応募(アプライ)をします。応募要項をよく読んで応募を進めてください。
改めて応募要件を確認して、自分とポジションとの親和性を確認したうえで応募を進めてください。
面接対策(模擬面接)
書類選考後の面接が始まるまでの1~2週間の間に面接対策を行います。
私の場合は模擬面接を実施し、なりたい姿や志望動機の確認に加えて、話し方や身振り手振りなどの印象面もチェックし、必要に応じて修正をしてもらっています。
以下の記事も参考になさってください。
ケース対策
ケース面接では、リアルタイムな受け答えが求められます。
そのため、書籍を読むだけでなく、本番を想定した対面形式でケース対策を行う方がより良いと思います。
企業研究
また、選考をうける企業がどんな企業であるのかを調べておくことも必要です。ざっくり全体をつかんだ上で、具体的な事例についても話せるようにします。コンサルティングファームでは、HPにプロジェクト事例が載っている場合が多いので、いくつか説明できるようにします。
さらに、自分がそのプロジェクトに参画したら、どのようなポジションで何ができるかを経験を踏まえて説明できれば更に良いかと思います。
コンサルティングファームについては、以下にまとめましたので、ご参考になさってください。
選考
ビジョンの明確化
いよいよ実際の選考です。是非、これまでの準備を出し切ってください。
その一方で、「文化マッチング」と「アサインプロジェクト」の2つはクリアにすることが必要です。
面接官の雰囲気や逆質問(転職者から面接官への質問)によって、自分がその企業で働くイメージが湧くかを確認します。
また、アサインされるであろうプロジェクトについても、その内容と自身のポジションを確認してください。
フィードバックをもらっての修正
面接後、できるだけフィードバックを受けるようにしてください。エージェント経由であれば、企業の人事から担当エージェントへ選考結果とともにフィードバックが伝えられているかと思いますので、できるだけ具体的に聞いて、次の選考で修正できるようにしてください。
スケジューリング
また選考期間中も、こまめにスケジューリングが必要です。
アプライのときと同じように、内定のタイミングを揃えられるように、面接日程を組んでいきます。
例えばコンサルティングファームであれば、グローバル承認が必要なファームもあるため、そのような事情も考慮が必要です。
内定
内定が出てから承諾までの期間は1週間程度とみてください。
その間に、現職にとどまった場合のキャリアと、転職をした場合のキャリアのどちらが、より自分のなりたい姿に近づけるかを比較します。複数内定を得ていれば、どの企業がもっとも良いかも考えていきます。
選考を受ける中で、キャリアプランもブラッシュアップされていると思いますので、もう一度キャリアを見つめ直していただきたいです。
また、年収とタイトル(職位)も比較軸に入ってくるかと思います。このとき、目先ではなくその先を見るようにしてください。例えば、転職時にはA社の方が待遇が良いが、5年後にはB社の方が良くなっているということもあります。
これらを踏まえて、意思を固めていきます。
「転職」の進め方
内定承諾(意思決定)
企業(エージェント経由の場合には担当エージェント)に内定を承諾する旨を伝えます。お断りをする企業にも、感謝の気持ちを添えて丁寧に連絡をします。
配属面談など、内定後に面談がある場合もあります。そこで評価を落とすと入社後まで響く場合がありますので、気を抜かないようにしてください。
退職交渉
退職を会社に伝えてから実際に退職するまでの期間は、3か月程度を見ておいてください。
そのうち、退職交渉は長い人では1か月程度かかる場合もあります。
退職の旨を伝える相手は通常は直属の上司です。
もちろん、引き止められることもあります。引き止められるということは、その必要とされているということですので、素直に嬉しいことではありますが、自身のキャリアにとってどちらが良いのかを判断していただきたいと思います。
引き止めの際、カウンターオファー(現職に留まれば、よりよい待遇にしますという約束)がでることもしばしばあります。しかし、カウンターオファーはその場限りの場合が多いです。例えば、部署移動が実現したとしても、数年後に元の部署に戻ることもありますし、昇進が実現したとしても、その後の昇進が保障されるというわけではありません。
また、内定承諾を辞退した企業のみならず、選考をうけた企業は数年間はアプライができなくなることも考慮した上で判断をしてください。
引継ぎ・有給消化
引継ぎは、状況によって様々ですが、短くても1か月程度は必要な場合が多いと思います。
それ以上かかってしまうこともありますので、退職交渉と並行して少しずつ引き継ぎマニュアル等を作ることをおすすめします。
引継ぎ後は有給消化が始まります。新しい業務に向けて予備知識やスキルを身に着けることもある程度必要ですが、新しい会社に万全な状態で臨むために心身ともにしっかりリフレッシュしていただきたいと思っています。
特に、家族との時間を大切にしてほしい、と個人的には思っています。転職直後は慣れない業務も多く、しばらく家族のために時間をとれなくなるかもしれません。また、転職には家族のバックアップが欠かせないと私は考えています。
まとまった時間をとれる機会は人生においてもなかなかないため、是非この機会に家族に感謝の意を伝えていただければ私としても嬉しいです。
今回の内容は以上ですが、詳しい説明が必要な箇所は別の記事で深堀をしていきたいと思います。
転職活動の一連の流れを把握してしっかりと準備を行い、なりたい姿へ近づいていく選択肢を多くの方が取れることを願っています。
ただ、どうしても転職市場の詳しい知識が必要となる部分もありますので信頼できるエージェントの方への相談や自身が進んで行きたい業界のことを知っている方からのお話を参考にして、最良の意思決定をしていただければ幸いです。
この機会がキャリア形成の一助となれば幸いです。