自分に合ったコンサルティングファームはどこか?

2021.10.10 コンサル業界でのキャリア

自分に合ったコンサルティングファームはどこか?

コンサルティングファームについては、転職者の方から「コンサルの仕事の内容や企業を調べてみたがよくわからない」、「各ファームの違いが分からない」というお話を聞くことがよくあります。また、「ワークライフバランスがあまりよくはない」、「戦略は示すが実行はクライアント任せ」というイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、一口にコンサルティングファームといっても、実はファーム毎に色が大きく異なります。
例えばPwCやクニエはワークライフバランスを大切にし、ダイバーシティを実現しています。また、多くのファームでは、青写真(戦略)を描くことに留まらず、現場まで入り込んで結果にこだわってプロジェクトを推進しています。

今回は、業界のイメージが掴みにくくブラックボックスになっているコンサルティング業界の全体像と、それぞれのファームの特色についてご紹介します。
ぜひ、コンサル業界の理解や転職を考えている方が志望するファームを絞り込む上で、自分がどのファームによりマッチしそうかのご参考にしていただければ幸いです。

コンサルティング業界の仕事内容

まずは、そもそもコンサルティングファームがどのような仕事を担っているかについて書かせていただきます。
コンサルタントの仕事はクライアント企業の課題解決と言われますが、もう少し具体的にすると、事業会社の部長や役員の方に対して提案や提言、ときには実行まで支援することです。
その中で大きく3つのソリューション(サービス)を提供しています。1つ目は戦略領域、2つ目は業務領域、3つ目はIT領域です。

チーム制におけるアサインイメージ

戦略領域

戦略領域では、企業全体や事業の方向性を決めるための支援を行います。
例えば、会社の3年後、5年後、10年後以降の青写真を描くような中長期計画策定や、既存の事業の次なる一手を講じるための事業戦略策定、既存事業とのシナジーを考慮した上での新規事業立案、それらを実行する手段としてのM&A・デューデリジェンスなどが戦略領域のプロジェクトです。
プロジェクトによって策定で終わるものもあれば、実行まで支援することもありますし、業務領域やIT領域のプロジェクトに引継ぐ場合もあります。

業務領域

業務領域では、企業全体や事業の業務効率を改善するための支援を行います。
業務領域はさらに、業務プロセス領域組織領域に分かれます。業務プロセス領域ではBPR(Business Process Reengineering)と呼ばれる業務改革や、コストカット、新規事業におけるオペレーション構築などがあります。
組織領域では、採用計画組織戦略の策定や人員配置適正化などがあります。最近では、働き方改革の推進などのプロジェクトも増えています。

IT領域

IT領域はITの知見や技術を活かした課題解決の支援を行います。
サイバーセキュリティ強化システム開発PMOなどのピュアなIT案件もある一方で、
企業全体のIT戦略やグランドデザインの策定、AI等の先端技術を用いた新規事業立案などの戦略領域とかぶる案件もあります。また、BPRを伴うシステム導入案件など、業務領域とかぶる案件もあります。

各コンサルティングファームの特色

コンサルティング業界マップ

コンサルティングファームの仕事内容をご紹介しました。ここからは、それぞれのファームの特色みていきたいと思います。
コンサルティングファームは、戦略ファームと総合系ファーム、シンクタンク系に大きく分けられますので、それぞれについてみていきます。

戦略ファーム

戦略ファームは、戦略領域を中心にソリューションを提供するファームです。最近では、ピュアな戦略案件だけでなく、業務領域やIT領域にも力を入れるファームが多い傾向にあります。
代表的なファームとしては、いわゆるBIG3と呼ばれるマッキンゼー・アンド・カンパニーボストン・コンサルティング・グループベイン・アンド・カンパニーがあります。他にも、A.T.カーニー、ローランド・ベルガーやドリームインキュベータなどが挙げられます。

マッキンゼー・アンド・カンパニー

“Fact-base”、”Analytical approach”という概念や、科学的かつ論理的な問題解決の方法論を、世界で初めて明確な形で確立したコンサルティングファームです。現在は世界60カ国、105拠点に9,000人以上のスタッフが在籍しています。
案件は戦略領域と業務領域が8割を占めており、入社すればほぼ必ずどちらか、もしくは両方を経験する事になります。なお、IT領域の案件も2割程度ありますが、IT戦略策定などの上流フェーズが大半を占め、開発等のいわゆる下流フェーズの案件はありません。
コンサルティングスタイルとしては、事実を正確につかみ取ったうえで、彼等が今まで生み出した理論や蓄積されたナレッジにあてはめて解くという特徴があります。
実力・ブランドともにトップレベルですので、世界最高峰の頭脳集団の中で、自分の力を試したいという方にマッチするファームかと思います。

ボストン・コンサルティング・グループ

コンサルティング業界ではよくBCGという略称で呼ばれ、マッキンゼーと並ぶ世界的に有名なコンサルティングファームです。日本での社員数は700名を超えており、全世界に50ヶ国以上にオフィスを構え16,000名以上のスタッフが在籍しています。
BCGもマッキンゼーと同じように案件は戦略領域と業務領域が8割を占めていますが、特徴的な点としては、フレームワークベースではなく、オーダーメイドでのコンサルティングサービスを提供する点があげられます。なお、国内企業の支援が中心であり、海外案件の案件は多くはありません。
また、最近ではデジタル領域に特化したDigitalBCGや大手企業のリソースとデジタルを合わせて新規事業、出資、ジョイントベンチャーの設立等を行うBCG Digital Venturesが設立され支援の幅を広げています。
クライアントに合わせて柔軟に考え、新たなフレームワークを生み出したい、という気概のある方には特にマッチするかと思います。

ベイン・アンド・カンパニー

少数精鋭のピュアコンサルとして有名な戦略ファームです。東京オフィスは1981年に開設され、現在では世界36か国、55オフィス、約7,000名のスタッフが在籍しています。
他の戦略ファームが業務やIT領域に活動を広げている中、ベインは戦略立案やM&Aの案件が非常に多く、業務改善やコスト削減の案件は多くありません。また、大企業のみならず、ベンチャー企業までクライアントにもつ点も特徴的で、海外案件も非常に多いファームです。
課題の特定に特に時間をかけるファームですので、少数精鋭で戦略案件を中心に携わっていきたい方にはマッチするファームかと思います。

A.T.カーニー

シカゴで創立されたコンサルティングファームで、現在では世界40カ国62拠点に3,500名を超えるスタッフが在籍しています。
オペレーション改善の案件、特にコスト削減に強みをもっています。
「目に見える成果(Tangible Result)」という価値観を重視している事が特徴で、実行支援まで注力しており結果までコミットしたい方に向いているファームです。また、海外案件も非常に多いので、 A.T.カーニーを目指す方は英語が必須です。

ローランド・ベルガー

ドイツ・ミュンヘンに本社をもつ戦略ファームです。世界36カ国に50拠点を構え2,500名程のスタッフが在籍しています。
案件の中心は戦略領域で、製造業とくに自動車業界で高いプレゼンスを持っています。IT案件も3割程度ありますがIT戦略の策定などの上流フェーズがほとんどです。クライアント全体の満足度を上げるかを重要視するファームで、現場主義を貫くファームです。また、全体の3分の1強が海外案件といわれています。
製造業に非常に強いファームですので、製造業のバックグラウンドをもち、その知見を活かしていきたい方にはマッチするファームです。

総合系ファーム

総合系ファームは、業務領域やIT領域に強みを持ちつつも、戦略領域まで幅広くソリューションを提供するファームです。
監査法人をバックボーンとしたBIG4(デロイト・トーマツ・コンサルティング、PwCコンサルティング、KPMGコンサルティング、EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング)、やアクセンチュア、ベイカレント・コンサルティング、シグマクシス、クニエ、アビームコンサルティングなどが挙げられます。

多くの総合系ファームでは、チーム制という人事制度をとっています。
戦略・業務・ITの領域別(ソリューションカット)のチームか、業界別(インダストリーカット)のチームのいずれかに所属することとなります。例えば、小売企業システム導入プロジェクトであれば、ITチームのメンバーと、小売業界チームのメンバーがアサインしてプロジェクトを進めていくことになります。ただし、戦略領域に関しては、戦略チームだけで行っていく傾向が強いことには注意が必要です。

デロイト・トーマツ・コンサルティング

Deloitte Touche Tohmatsu(世界140カ国に16万人以上が在籍)のグループメンバーであり、監査法人トーマツがバックボーンであるファームです。
戦略・業務・ITと幅広く手掛けていますが、とくに業務改革系案件に強みを持ち、グローバルで財務アドバイザリー、税理士法人、法律事務所などをグループ会社として持っているため、広く深い知見をもとにしたコンサルティングサービスを提供しています。
BIG4の中で一番歴史が古く、組織も成熟しているファームであり、戦略や業務領域を中心に業務に取り組んでいきたい方にはマッチしやすいファームですが、最近ではITの分野でも急速に力をつけています。IT拡大の取り組みの好例として、アクセンチュアに対抗するため、2022年現在4千人の社員数を5年後に1万人にするという計画を発表し、採用が加速しています。

PwCコンサルティング

PwCグループ(世界157カ国に22万人以上が在籍)のグループメンバーであり、日本ではPwCあらた有限責任監査法人をバックボーンにもちます。
他のBIG4と同じように、戦略・業務・ITと幅広く手掛けており、財務領域に強みを持ちグローバル案件も多くあります。最近では、IT領域、特にDXに力を入れており、2020年にはTechnology Laboratoryを開設し、メタバース活用支援など先進的な取り組みを進めています。また、地方自治体に強みを持つ点も特色であり、DXという文脈でも、Digital Government Anywhere Talentを設置し、行政のDX化を包括的に支援しています。
文化という面では、残業時間の管理の徹底や有給消化の推奨、リモートワークの推進などワークライフバランスを大切にしているファームで、女性比率が30%を超えていることも特徴です。このようにダイバーシティを大切にしているファームですので、コンサルティング業界に挑戦したいが、自分らしく働きたい、という方にもマッチするファームかと思います。

KPMGコンサルティング

KPMGインターナショナル(世界152カ国に18万名以上が在籍)のグループメンバーであり、日本では有限責任あずさ監査法人をバックボーンにもち、800名程度のスタッフが在籍しています。
リスクマネジメント領域を中心に、AI・RPAといった先端テクノロジーの活用に強みを持ち、ファイナイス領域などにおけるプレゼンスも高いです。
コンサルティングスタイルとしてはクライアントとの中長期的なリレーションシップ構築を非常に大切にしており、10年単位での付き合いがあるクライアントもいると聞きますので、長期的にわたって顧客と伴走していくことが性に合う方にはマッチしやすいファームです。

EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング

EYグループ(世界150カ国以上に14万人以上が在籍)のグループメンバーであり、EY新日本有限責任監査法人をバックボーンに持ちます。
財務領域に強みを持ち、日本展開を狙う外資系企業や海外展開を狙う日系企業の案件などのグローバル案件も多数あります。
徹底的な現場主義が根付いており、クライアント先の社員のように働くスタイルが特徴てきなファームですので、クライアントとともに現場で一緒にプロジェクトを進め、信頼関係を築いていきたいという方にはマッチするかと思います。
他の監査系ファームと比べるとプレゼンスが低い印象でしたが、最近では「プロジェクト・ドラゴン」と呼ばれる成長プランによって、チームを次々とビルドしています。また、「Building a better working world(より良い社会を構築する)」というパーパスを掲げ、これに一人ひとりが非常に強いこだわりを持って業務に取り組んでいる文化であることも特徴的です。

アクセンチュア

世界55カ国におよそ39万人以上のスタッフが在籍する、世界最大規模のファームです。
業務改革アウトソーシング(BTO)に強みを持っており、BPOの最先端を行く企業として高く評価されています。大規模なIT開発運用部隊を有していることもあり、ITソリューションが強いことが特徴的です。
社員数は2014年までは5千人前後で推移していましたが、2022年には1万8千人を超え、8年間で約4倍の規模になりました。
総合系ファームの中でもIT色が特に強いファームですので、IT経験を強く活かしていきたい方にはマッチするファームです。

ベイカレント・コンサルティング

日本発の総合系コンサルティングファームとして、官民問わずコンサルティングサービスを提供しているファームで、コンサルティングファームでは珍しく東証プライムに上場しています。
IT領域に強みを持つファームでしたが、近年は他の総合系コンサルファームと同様に戦略系案件も豊富にあります。
特徴としては、チーム制ではなく、ワンプール制の人事制度をとっていることが挙げられます。ワンプール制ですので、ソリューションやインダストリー関係なく、プロジェクト単位で仕事内容が大きく変わります。例えば、金融業界のIT領域でプロジェクトをやった方が次のプロジェクトでは製造業界の戦略領域のプロジェクトや、通信業界の業務領域のプロジェクトをやることもあります。そのため、領域や業界に縛られず様々な案件に携わっていきたい方にはマッチするかと思います。
近年ではデジタル・イノベーション・ラボの立ち上げ、DX関連書籍の執筆など、日本企業のDX推進に力を入れています。

シグマクシス

シグマクシスは、2008年に三菱商事の資本を中心に設立された日系コンサルティングファームです。なお、現在では資本関係は解消されています。ベイカレント・コンサルティングと同様に東証プライムに上場している点もコンサルティングファームとしては珍しい点です。
コンサルティングサービスのみならずシグマクシス自体が事業投資をしていることもあり、新規事業チームが強いことが特徴です。
新規事業や企業との協業を(アライアンス)に挑戦したい方にはマッチするファームかと思います。

クニエ

NTTデータの100%出資のコンサルティングファームで、経営基盤が強いため他のコンサルティングファームでは受注が難しい中長期的なプロジェクトも手掛けます。特に、製造業の業務領域で高いプレゼンスがあります。IT領域の案件もありますが上流案件がほとんどで、要件定義以降は親会社であるNTTデータに引き継ぎます。1チームが数十人と小規模であり、現場に入り込んだコンサルティングスタイルであることが特徴的です。
中途入社で入った場合には年間の研修時間を200時間以上行っていることも特筆すべき点かと思います。また、大企業並みに福利厚生が充実し、育成環境も整っていることから離職率も10%未満ですので、日本らしく、しかしオープンな企業風土が好きな方にはマッチするファームです。

アビームコンサルティング

2003年にデロイトトウシュトーマツからのスピンオフにて誕生した日本発のコンサルティングファームです。2004年からNECと戦略的資本提携を始め、2015年にNECの完全子会社となりました。そのため案件もIT領域に強みをもちます。
日本企業であるアビームコンサルティングが事例を体系化することで、日本を中心としたアジア近隣のクライアントのニーズに深く応えられるファームであることが特徴です。また、「ダイバーシティ&インクルージョン」というビジョンを2016年に打ち出し、全社を挙げてワークライフバランスの実現を推進しており、女性の活躍もしやすい環境です。

シンクタンク系

経済調査などのリサーチがメインであるイメージが強いシンクタンクですが、最近では、戦略、業務、IT領域すべてのコンサルティングサービスにも広げて行っている傾向にあり、ファーム出身者が転職していくことも多々あります。
特徴としては大手企業のグループ会社であることが多いため、グループ会社から案件のトスアップがあること、グループの事業会社のナレッジがたまっていることが挙げられます。具体的な企業としては、三菱UFJリサーチ&コンサルティング、日本総合研究所、NTTデータ経営研究所、野村総合研究所などが挙げられます。

今回は、コンサルティングファームの全体像と、それぞれのファームの特色をお伝えしました。
コンサルティングファームと一口にいっても、一般のイメージと近いストイックな環境のファームもあれば、実力主義でありつつも自分らしく働けるようなファームもあります。ご自身とマッチすればするほど、入社後の立ち上がりも早くなりパフォーマンスも高くなるためどのファームを選択するかは重要になります。今コンサル業界への転職を考えている方が入社後のご自身の姿をご想像いただくことになり、この機会がキャリア形成の一助となれば幸いです。

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