コンサル業界の職位による役割の変化

2021.10.10 キャリアのルールと歩み方


コンサル業界の職位による役割の変化

転職者の方から「コンサルティングファームではどのような役職があるのか」といった質問を受けることがあります。
コンサルティングファームには部長や課長といった役職ではなく、パートナー、シニアマネージャー/ディレクターマネージャー、シニアコンサルタント、コンサルタント、アソシエイト/アナリストといったタイトル(職位)があります。
今回は、コンサルティングファームにおける代表的なタイトルと、その役割について簡単にまとめます。ただし、ファームによってタイトルの名称や役割などが異なりますので、その点はご理解ください。

コンサルのタイトルとそれぞれの役割

職位についてお伝えする前に、まずはコンサルタント(職位のコンサルタントではなく、職種としてのコンサルタント)の仕事について大まかにご説明します。
コンサルタントの仕事は大きく、デリバリー、セールス、ファーム経営に分かれます。

デリバリーとは、プロジェクト(案件と言うこともあります)の遂行です。多くの方が想像するコンサルタントの仕事はデリバリーかと思います。

セールスは、プロジェクトを受注するための提案活動を指しますが、一般的な営業とは大きく異なります。こちらについては後程詳しくご説明します。

ファーム経営は、言葉通り、ファームの方針決め、管理、運営を指します。デリバリーやセールスの最終責任を担う他、採用、育成、組織づくり等も行います。

職位が上がるにつれてデリバリー→セールス→ファーム経営と、仕事の重心が移っていきます。

それでは、ここからは各タイトルの役割について説明していきます。

プロジェクトにおける各タイトルの役割

アソシエイト/アナリスト

アソシエイト/アナリストは簡単にいうと、「コンサル見習い」です。
議事録や資料の作成、情報収集やデータ分析など、プロジェクトにおいて実際に手を動かす仕事を担います。仕事内容を見ると作業が中心のように思えますが、実際はアソシエイト/アナリストに対してもチームの一員として、能動的な行動やバリューの発揮が求められます。例えば、チームの会議で発言をしなければ、「君は何のためにそこにいるのか?」と厳しい言葉を投げかけられることもあります。
また、アソシエイト/アナリストの収集した情報や分析したデータを用いてコンサルタントやマネージャーがプロジェクトを進めていきますので、その意味でも大変重要な役割です。ただ情報収集や分析を行うのではなく、メンバーがどのように活用するのかを考えたアウトプットが出来るとより良いとされる傾向にあります。

アナリスト/アソシエイトの歩み方

コンサルタント

コンサルタントは簡単に言うと「一人前のコンサルタント」です。資料作成やリサーチ・分析などのタスクをこなすためのスキルをひと通り身につけ、“コンサルタント”としての考え方や働き方にも大分慣れてきている段階です。プロジェクトにおいては、核となるタスクを仮説の塊で担いますし、アナリスト/アソシエイトのときと比べると課長〜部長クラスを中心にクライアントと直接コミュニケーションを取ることも増えます。多くの方が「コンサルタント」としてイメージしている業務を行う職位がコンサルタントです。
コンサルタントは自分の業務を卒なくこなし、レベルアップしていくことが求められる一方で、アソシエイトやアナリストを部下として持つ立場でもあります。部下であるアソシエイトやアナリストのアウトプットの質が低い場合には、コンサルタントがマネージャーから追及されることになるため、そういう意味でも困難を感じる方が多い職位です。
なお、事業会社での社会人経験5年程度で転職された方は、コンサルタントの職位から始まることが多いです。また、ファームや個人の能力によって差はありますが、アソシエイト/アナリストからは、2~3年程度でコンサルタントに昇進します。

コンサルタントの歩み方

シニアコンサルタント

シニアコンサルタントのイメージを一言で言うと、「プロジェクトの中核」です。プロジェクトにおいては、マネージャーの右腕としてプロジェクトの推進を補佐します。また、小規模なプロジェクトであれば、プロジェクトリーダーを担う場合もあります。課長〜部長クラスを中心にしつつも、事業部長レベルのクライアントとコミュニケーションを取ることも珍しくありません。
プロジェクトにおいては、イシューをまるごとマネージャーから渡され、その分解と仮説構築、コンサルタントやアソシエイト/アナリストへの指示出しまで担当することが多く、プロジェクトの中心メンバーとして動くことになります。その中で、1、2人の部下の育成を任されることも多くあります。

シニアコンサルタントの歩み方

マネージャー

「プロジェクトの現場責任者」ともいえるのがマネージャーです。セールス段階からプロジェクトに入ることが多く、プロジェクト初期の課題の構造化、仮説構築、作業設計を中心となって行い、プロジェクトの方向性を定めたうえでメンバーに仕事や役割を割り振ります。
その後の仮説検証や意味合い出しなどは、コンサルタントやアソシエイト/アナリストが中心となって行いますが、その過程でもマネージャーが随時判断を下しながらプロジェクトが進みますので、最低でも3〜5人の部下のマネジメントや育成は卒なくこなせる必要があります。
また、プロジェクト全体の管理や人員・コスト管理、現場レベルのクライアントとの折衝も行い、次の案件の獲得に向けての準備も進めるため、セールスとしての役割も少しずつ担い始めます。
加えて、マネージャーには、クライアントとのコミュニケーション内容を整理したうえでパートナーに相談し、プロジェクトを正しい方向へ牽引していくことが求められます。プロジェクトが誤った方向に進んだ場合には、手戻りが多く発生し、最悪の場合にはプロジェクトが炎上してしまいます。
このように、マネージャーには、コンサルタントとしての高い能力に加えて、高いマネジメント能力やコミュニケーション能力が求められます。そのため、アソシエイト/アナリストからコンサルタントやシニアコンサルタントへ昇進することに比べて、シニアコンサルタントからマネージャーへの昇進は難易度が上がります。
マネージャーの歩み方

シニアマネージャー/ディレクター

シニアマネージャー/ディレクターのイメージを一言で言うと、「パートナーの右腕」です。パートナーは各プロジェクトの最終責任も持ちながら、プロジェクトの創出や拡大(セールス)、採用、育成のバリューチェーンを循環させていく役割を担います。その中で、シニアマネージャー/ディレクターはプロジェクト周り、つまり複数プロジェクトの管理新規プロジェクトの創出を中心にパートナーの右腕として活躍することが期待され、デリバリーだけでなくセールスについてもビジネスKPIを負うことになります。また、複数プロジェクトを管理するため、そして自らがセールスにより注力するために、マネージャーの育成にも力を入れる必要があります。
対クライアントという観点では事業部長〜役員などCXOクラスとコミュニケーションを取りながら仕事を進めます。

シニアマネージャー/ディレクターの歩み方

パートナー

コンサルティングファームは支援会社に分類されますが、パートナーはその中で異色の存在であり、「事業責任者」としての顔も持っています。
パートナーのスコープはコンサルティングのバリューチェーンの全てであり、セールスとデリバリーに責任を持つことはもちろんのこと、採用、育成、組織づくり等、チームや部門全体のあらゆる場面で意思決定を行い、その決定に責任を持たなければいけません。
更に、全社的な視点を持ちファームの経営の一部も担いながら、チームや部門の成長をさせていきます。
パートナーになるためには、今までの実績が一定水準を満たしていることは前提の上で、経験豊富な上位のパートナーからファームを経営する仲間として認められる必要があります。そのフロー自体はファームによって異なりますが、どのファームであっても「ファームと自身のビジョン」「ビジョン達成のための戦略」「実現プラン」「現在のアクションやケイパビリティ」の4つの観点から、「自分がなぜパートナーになるべきなのか」を示すことが必要です。

コンサルティングファームのセールス(提案活動)

コンサルタントの仕事としては、主にプロジェクトでの仕事をイメージされると思いますが、コンサルティングファームにおける営業活動であるセールスも、職位が上がるにつれて業務の割合を大きく占めるようにになります。
セールスは、パートナーが描いたストーリーラインに、マネージャーがメッセージやコンテンツをいれて資料として仕上げ、クライアントに提案をするという流れで行われます。

また、セールスは、クライアントが新規か既存か、プロジェクトか新規か既存かによって、「新規クライアント・新規プロジェクト」「既存クライアント・新規プロジェクト」「既存クライアント・既存プロジェクト」の大きく3つに分かれます。

新規クライアント・新規プロジェクト

「新規クライアント・新規プロジェクト」は、取引のないクライアントにおける、初めてプロジェクトを獲得するためのセールスです。
「新規クライアント・新規プロジェクト」のセールスはパートナーによって大きくスタイルが変わります。専門性を活かした講演会やセミナーを主宰し企業とつながるパターン、既存クライアントから紹介をうけるパターン、コールドコールで突破するパターンなど、実に様々です。いずれの場合も、まずは小さな案件を獲得し、その案件を成功させることで、案件を段々大きくしていきます。
「新規クライアント・新規プロジェクト」の獲得は大変難易度が高いセールスですので、これが得意なパートナーは社内でも高い評価を受けます。

既存クライアント・新規プロジェクト

「既存クライアント・新規プロジェクト」は取引実績のあるクライアントにおける、初めてのプロジェクトを獲得するためのセールスです。
すでに取引実績があるとはいえ、既存プロジェクトがどれだけクライアントを満足させられているかが非常に重要です。
私の知っている例を一つ挙げると、大手生命保険会社において、「新規・新規」で新規出店におけるリードから成約までの相関データ分析の案件を獲得し、そのプロジェクトを成功させ、他のファームが担っていた新規出店戦略プロジェクトを「既存・新規」で獲得したといったことがあります。

既存クライアント・既存プロジェクト

「既存クライアント・既存プロジェクト」は取引実績のあるクライアントにおける、プロジェクトの継続を実現するためのセールスです。
マネージャーとして初めてセールスを行う場合には、この「既存クライアント・既存プロジェクト」から始める場合が多く、セールスのスタート地点ともいえるものです。そのため、マネージャーが中心となって提案を行うことが多く、プロジェクトを遂行しつつも、提案の準備を進める必要があります。

今回の記事では、大まかにコンサルティングファームにおける職位や、セールスについてお伝えしました。これからコンサルタントを目指す方にとっても、すでにコンサルタントでいらっしゃる方にとっても、今後のキャリアのイメージを醸成する助けになっていれば嬉しいです。
また、この機会がキャリア形成の一助となれば幸いです。

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