【転職体験談】富士通からコンサルへ「積み上げてきた知見に固執しない勇気」
【インタビュー】富士通からコンサルへ「積み上げてきた知見に固執しない勇気」
今回は富士通から総合系コンサルティングファームに転職し、活躍されている方にお話を伺いました。
日本を代表するSIerに勤めていた中で、なぜ敢えて転職という決断をされたのか、また転職をされて後悔などはないか、などを中心にお話いただきました。
どのような方が会社に残った方が良いのか、また、どのような方が転職が選択肢になりえるのか、そういったお話もお伺いしましたので、今まさに、システムエンジニアの方でキャリアに悩んでいらっしゃる方にとって参考となれば幸いです。
ー本日はどうぞよろしくお願いいたします。まずは、経歴を簡単に教えて下さい。
新卒で富士通に入社し、システムエンジニアとして配属されました。2年間は主に受託開発プロジェクトにて開発メンバー、プロジェクトマネージャー補佐としてwebアプリケーション改修案件に従事し、次の2年間は業務グループリーダーや移行グループリーダーとしてアプリ移行やシステム移行を担当しました。その後6年間は約10~30名規模のプロジェクトマネージャーとして現行システム改修、保守業務や最適化に伴うクラウド(AWS)上でのシステム再構築に従事しました。10年ほど富士通に勤め、総合系のコンサルティングファームに転職しました。
ー転職を考えはじめたきっかけや理由を教えて下さい。
これまでより業務が落ち着き、改めて現職における今後のキャリアを考えた際に、このままで良いのか考えるようになりました。これまでもプロジェクトマネージャーという形でプロジェクトの管理を行っていた中で、今後はプロジェクトを管理中心として業務を行っていくことが予想され、一生富士通に骨をうずめるのかと疑問が強くなり転職活動を始めました。
ー過去にも転職を考えられたことはございますか。
実は転職活動は過去に2度トライしています。1度目は30歳手前のときで、現職があまりに激務だったことが理由で始めました。そのときはまず大手のエージェントに相談したのですが、そもそも転職するべきなのか自体に迷いがあった中で、ひたすらに求人票が送られてきたため、現職の忙しさもあり、本格的には活動しませんでした。2度目は職位が1段階上がった33歳のときで、関わっていた案件にネガティブな感情を抱き転職を検討しました。ただその時も業務が忙しく本格的には動くことができませんでした。
ー今回の転職活動においてはまず最初に何をされましたか。
今回もそもそも転職するべきかを相談したかったため、エージェントを活用しようと考えました。過去の経験から大手の人材紹介会社は求人紹介がメインだとわかっていたので活用せず、まずはビズリーチに登録しました。すぐにたくさんのメッセージを受け取りまして、3名のエージェントに絞って返信をしました。
ーエージェントを複数検討した中、最終的に選んでいただいたのはなぜでしょうか。
3社の中で唯一、転職をするべきかどうかの相談に乗ってくださり、将来のキャリア自体について考える機会をいただけたからです。他2社のエージェントのうち、1社は今までのエージェントと同じように会う前から求人票が送られてくるタイプの方でした。もう1社は丁寧にコンサル業界について話してくれたものの、転職をするべきか等、キャリアの根本的な相談はしづらい雰囲気でした。
その一方で奥井さんはキャリアについて向き合ってくださり、将来何をしたいか、どうなりたいのかという話をしてくれました。将来のキャリアについての問いをいただいたときに、全く答えられない自分がいることを自覚し、転職が目的になっていることに気付かせていただきました。
「キャリアについて一緒に考える」と謳うエージェントは他にもいると思うのですが、実際に求人票を見せていただいたのが3回目以降で、私のために時間を費やしていただいた感覚があったのも大きかったと思います。売り切り型ではなく、その先の繋がりも感じさせてくれました。
ー過去2回と異なり今回転職活動をやり切れた要因は何でしょうか。
現職と迷っていたため、転職に向けてのパワーが重要でした。転職することへの恐怖が強く、これまでの10年積み上げたものが崩れるのではないか、転職した先が馴染めないのではないか、など色々と考えてしまい、転職への熱量は30%程度でした。
ただ、今回はプロジェクトの合間で余裕があったことに加え、転職活動の中で、キャリアを真剣に見つめ直した結果、自身のキャリアに疑問が生まれていたこと、そして年齢的にラストだという危機感があったことで転職のエネルギーを保てたのだと思います。実際奥井さんに相談しながら気づいたのですが、同じ年齢だとファームではマネージャークラスになっており、未経験だと給与が下がる可能性が高いことをリアルに実感しまして、その危機感はより明確になりました。
その後実際に選考を受けているときも不安はあったのですが、あるファームとの選考においてとてもウェルカムな雰囲気を感じ、前向きになることができましたね。選考を進めるうちに前向きになれると言われていましたが、その意味がわかりました。
ー最終的にはどのように決断をされたのでしょうか。
自分が今までやってきた業界にこだわるのか、こだわらないのか、そこが一番悩みました。最終的には固執する必要はないと感じられたものの、自分が積み上げてきたものに対する執着は強くありましたね。ただ、奥井さんと話していく中で、ポストコンサルを考えたときに今の業界分野にこだわると、キャリアが狭まる可能性があると真っすぐに伝えて下さったこと、あとは妻からも「固執しすぎじゃない?」と言ってもらえたことが大きかったですね。
ー転職という決断をされましたが、逆に富士通でキャリアを積み続けたほうが良いタイプの方はどういった方でしょうか。
仕事以外も大切にする、つまりワークライフバランスを重視する方は富士通にいた方が良いと思います。ワーケーションの費用も出ますし、妻の出産時には2ヶ月休めますし。あとは、富士通の中でもニッチなところにいる人、富士通ならではのスキル、逆に言うと富士通でしか通用しないスキルを高めてきた人は、そのまま残った方が良いですね。
ただ、富士通以外で活かせるスキルをもっているなら他を見ても良いと思います。 少し前に読んだ記事で「富士通に対する印象ランキングにおいて、学生の人気と富士通社員の人気が乖離している」という内容のものを目にしましたが、やはり富士通社員の多くは自社に対してネガティブな想いを持ったまま行動できない人が多いと感じています。ネガティブな想いを抱えるくらいであれば、転職活動はしてみても良いのではと思っています。転職活動の一歩目も勇気が必要ですが、そのあとの採用面接まで受けてみるべきだと思います。
ー最後に、今後どのようにご自身のキャリアを築いていきたいか、教えてください。
自分の武器、専門性がないことへの問題意識が強いので、短期的にはインダストリーでもソリューションでも、自分の核となるものを作っていきたいです。今は、業務改善系が興味あります。前職ではそもそも業務自体がおかしくても、その業務にあわせてシステムをつくってくるというのが多々あったため、業務から見直してシステムを作りたいという思いがあります。そのほうがバグも少なくなりますし、使いやすいはずなので、業務からITへの落とし込み、といったところをやりたいです。
中期的にはしっかり昇進しながら、現職のコンサルティングファームも、前職の富士通も支援会社だったので、まだ経験してことがない事業会社という選択肢も考えています。現時点で興味がある事業会社は食品メーカーです。私の家族がその業界に勤めていることにも影響を受けているのかもしれませんが、人気商品が店頭から嘘のようにすぐなくなるのが面白く、このように人間を動かせるのはすごいなと思っています。マーケティングの例をあげましたが、直接マーケティングをするのでなくとも、そこに業務改善として関わりながら、将来子どもに「お父さん、これに関わっているんだぞ」と言えたらいいですね。今後もコンサルの業務に取り組む中でキャリアを考え続けていきたいと思います。